【よくわかる!買収・売却】第99回 デューデリジェンスその3

今回も前回に引き続きデューデリジェンスについて検討します。

6. デューデリジェンスの調査事項

(1)時期的範囲、レッドフラッグ型

範囲を絞らないと調査対象が際限なく広がってしまうことから、例えば財務事項や議事録について過去一定の時期的範囲に限定されることが一般的です。また、買い手と買い手の専門家との間で、いわゆる「レッドフラッグ型」といって、特に注意を要するリスクファクターの有無の調査に絞ってなされるデューデリジェンスの実施に合意することもあります。限られたリソースをディールブレーカーとなり得る重要なリスクファクターに注ぐことで効率的なデューデリジェンスができるからです。特に中小型の案件のように予算に制限がある場合や、時間に制限がある場合などには、レッドフラッグ型が用いられます。

(2)調査対象

財務、税務、法務に関して、主に下記のような事項について調査することになります。デューデリジェンスは売り手の機微情報に触れる手続きであるばかりか、売り手の担当者にとって大変な負担をもたらす手続きであることから、実施する専門家としても、自分の興味関心に基づいてむやみに何でも調査するのではなく、デューデリジェンスの目的実現のために必要事項を十分な範囲で調査することが求められます。

ア)財務デューデリジェンス

  1. 損益計算書
  2. 貸借対照表
  3. キャッシュフローと事業計画
  4. 貸借対照表に記載のない債務、偶発債務
  5. 関連当事者取引
  6. 実体と決算書上の数字の齟齬(そご)のレビュー
  7. 財務情報の質のレビュー
  8. 国際財務報告基準(IFRS)に移行する場合の資産および負債の公正価値評価

イ)税務デューデリジェンス

  1. 所得税(法人税)
  2. 売上・サービス税(SST、日本では消費税)
  3. 移転価格税制
  4. 源泉所得税

ウ)法務デューデリジェンス

  1. 組織、株式
  2. ガバナンス
  3. 契約
  4. 資産、負債
  5. 労務
  6. 許認可、コンプライアンス
  7. 訴訟、紛争

これはあくまでも一般的な例で、対象会社の事業内容に応じて重点を置くべきところが異なります。事案に即して調査対象にメリハリをつけて実施します。

https://www.nna.jp/news/show/2371343

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