会社・事業の買収・売却に関する記事(第89回)がNNAに掲載されました

前回は、2021年度の日本企業によるマレーシアでの合併・買収(M&A)の概況と、今後増加が見込まれるM&Aの分野について検討しました。今回は、22年に発表された日本企業による2件のM&A案件についてご紹介します。

1.JCBによるフィンテック企業に対する出資案件

JCBは、22年1月13日にマレーシアのフィンテック(ITを活用した金融サービス)企業ソフトスペースと資本業務提携し、ソフトスペースに対して約500万米ドル(約5億9,200万円)を出資するとともに、マレーシアでのJCBカード発行および加盟店獲得業務に関するライセンスを付与したと発表しました。

JCBは、日本では約55%のマーケットシェアを有する米ビザに次いで2位となる約30%のシェアを誇り、世界でも、ビザ、マスターカード、銀聯カード、アメリカン・エキスプレス(アメックス)に次いで5位となる約1%のシェアを有する、日本唯一の国際クレジットカードを発行する会社です。

JCBの22年1月13日付プレスリリースによれば、ソフトスペースは12年にクアラルンプールで設立され、金融業界の複雑な構造を簡素化するソリューションを生み出し、10カ国で30以上の金融機関で導入されています。18年には英フィナンシャル・タイムズ紙が選定するアジア太平洋地域の高成長企業1,000で66位にランクインし、20年には調査会社のIDCが選定する急成長企業の1つとして認められているようです。

今回の提携により、市販のスマートフォンやタブレットにソフトスペースのアプリを入れるだけで、JCBコンタクトレスの取り扱いやソフトスペースの各種マーケティングサービスが利用できる端末として使用でき、そうした端末を活用した東南アジア諸国連合(ASEAN)域内の金融機関に対する新たなマーケティングソリューションの提供など、カードビジネスを越えた幅広い領域での事業提携の実現を企図しているとのことです。どちらかと言えばマレーシアではビザとマスターカードの陰に隠れる存在だったJCBが今回の提携によって、よりプレゼンスを高めていくことが期待されます。

2.吉野家による回転ずしチェーンの株式譲渡

吉野家は、22年1月19日に、同社の連結子会社であるマレーシア法人が、回転ずしレストラン「スシキン(すし金)」の株式28%をマレーシアの上場企業であるテクスケム・リソーシズ(TRB)の子会社であるスシキン・ホールディングスに約27億円で譲渡する旨を発表しました。

スシキンは、1995年に設立されてから、マレーシア全土に100店舗以上を展開する、マレーシア最大手の回転ずしレストランです。吉野家は14年にテクスケムグループと経営レベルでの人材交流およびノウハウ共有を進めることを主な目的として、スシキンに出資しました。今回の株式譲渡について、吉野家の22年1月19日付プレスリリースには、海外事業を含めて事業ポートフォリオの最適化を図り、成長事業へのリソース配分を戦略的に進めるために実施したとあります。 マレーシアでは吉野家およびはなまるうどんの店舗も21年中に閉店したようですが、吉野家の東南アジアでのフランチャイズへの経営指導および加盟店募集を担うアジアヨシノヤインターナショナルはマレーシアに置かれていることから、吉野家ブランドの3度目の復活と今後マレーシアでの新たな事業展開が期待されます。

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