会社・事業の買収・売却に関する記事(第70回)がNNAに掲載されました

The Daily NNA Malaysia版(2021年6月23日)に、弊社代表の寄稿した「会社・事業の買収・売却 第70回 出資と融資その1」が掲載されました。今回は、合併・買収(M&A)のストラクチャーを検討する上で避けて通ることのできない出資と融資の違いについてお話しします。

www.nna.jp/news/show/2203994

前回は会社を一から立ち上げることと会社を買収して事業を進めることのメリット、デメリットについてお話ししました。今回は、合併・買収(M&A)のストラクチャーを検討する上で避けて通ることのできない出資と融資の違いについてお話しします。

1.対象会社の経営に参画する権利を取得するのが出資、お金を貸すのが融資

出資とは、対象会社の株式を取得することを言います。株式とは、会社に対する支配権を表章するもので、重要事項を決定する意思決定に関わる議決権などから成る共益権と、配当を受け取ることのできる権利や会社清算時に残余財産の分配にあずかることのできる権利などに関わる自益権とで構成されます。平たく言うと、株式とは会社の意思決定権と利益を受け取る権利を表しますので、「出資をする=株式を取得する」と言うのは、持ち株比率に応じて対象会社の意思決定権と配当受領権を取得するということになります。つまり、出資者となるというのは、会社の一部所有者になることを言います。

一方、融資とは、法的には対象会社との間で金銭消費貸借契約(Loan Agreement)を結ぶこと、つまり、対象会社にお金を貸すことを言います。そのため、融資をするというのは対象会社の債権者になるということになります。

2.もう少し具体的にそれらの違いを見てみましょう。

(1)議決権の有無

出資する場合には株主になりますので、株主総会に出席したり、株主総会にて決せられる重要事項についての議決権(総会での投票権)を有したりすることになります。一方、融資の場合にはそのような会社の経営に参画する権利は取得しないのが通常です。

(2)配当と利息

出資の場合には、配当可能利益がある場合に初めて配当を受領することができます。そのため、会社が利益を産まず損失を計上している場合には株主は配当を受け取ることができません。そして、配当は、Income Tax(日本で言う法人税)を支払った後になお配当可能利益がある場合に支払われることになります。

一方、融資の場合には、会社の業績にかかわらず、ローン契約に基づいて一定の金額を利息として受領することができます。対象会社(債務者)側において、この利息の支払いは法人税の支払い前に行い、費用に計上します。

(3)弁済義務の有無

出資の場合、対象会社は出資金を弁済する義務はなく、出資者は第三者や対象会社等に株式を買い取ってもらう等しないと出資を引き揚げることはできません(非上場会社の場合、株式を対象会社の許可なく第三者に売却してはいけないという株式譲渡制限があるのが一般的ですので、出資の引き揚げは実際には容易ではありません)。

一方、融資の場合、対象会社は弁済期限までに元本を弁済する義務を負います。それとの関係で、出資の場合はそもそも出資金の返還が予定されていないため元本保証という概念はない一方、融資の場合には個別の合意がなされない限り元本の弁済が保証されているという違いもあります。

(4)会社清算時の序列

出資の場合には、会社清算時に、債権者全てに対して全額債務を弁済してもなお残余財産がある場合に初めて出資金の返還を受け取ることができます。一方、融資の場合には、他の債権者と同様に債権額に応じて融資金の返還を受け取ることができるため、出資者よりも序列が上の扱いになります。

<プロフィル>

神林義之(かんばやし・よしゆき)

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