会社・事業の買収・売却に関する記事(第113回)がNNAに掲載されました

前回は、2022年の日本企業が関連する合併・買収(M&A)案件の金額トップ15と、その動向を取り上げました。今回は、そのうちのソニーグループの子会社である2社によるゲーム会社買収とゲーム業界のM&Aの動向について個別に見ていきます。

■1. ソニー・インタラクティブエンタテインメントによる米国ゲーム開発会社の買収

ソニーグループの100%子会社であるソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下SIE)は22年1月31日、米国の独立系ゲーム開発会社バンジーを買収することを発表しました。その取引額は約5,140億円で、ソニーグループのゲーム事業に関するM&A案件としては過去最大規模の案件となりました。SIEは、家庭用ゲーム機「プレイステーション(PlayStation)」の研究開発・製造・販売およびゲームソフトの開発・販売を手がけています。その一方でバンジーは、00年から07年にかけてマイクロソフト社の傘下に入ったこともある米国ゲーム開発会社で、人気ソフトの開発によりマイクロソフト社の看板商品である家庭用ゲーム機「Xbox」の人気を押し上げたとされています。主なソフトに、「デスティニー(Destiny)」シリーズや「ハロー(Halo)」シリーズなどがあります。今回の買収に当たり、SIEは、プレイステーションをより多くの人に利用してもらうための戦略上重要な一歩であるとしています。

■2. ソニー・コーポレーション・オブ・アメリカによる米国ゲーム開発会社の出資拡大

続いて、同じくソニーグループの子会社であるソニー・コーポレーション・オブ・アメリカ(以下SONAM)による米国のゲーム開発会社エピックゲームズ(以下エピック)への出資拡大についてです。SONAMはソニーグループの米国本社として機能する会社で、22年4月11日にエピックへの約1,300億円の追加出資を発表しました。SONAMによるエピックへの出資は20年、21年に続いてこれが3度目で、これまでの出資金額は合計で14億5,000万米ドル(約1,944億円)、本出資でエピック株の4.9%を保有することになります。同時に、レゴの親会社からも10億米ドルの出資を受けることが発表されています。

エピックは世界的に人気の「フォートナイト」と呼ばれるゲームで知られていますが、ゲーム開発にとどまらず、映像や製造業にも利用される開発ツールの制作も手がけています。エピックの22年4月11日付のニュースリリースによると、本出資にはインターネット上に仮想世界を構築してサービスを提供する「メタバース」事業を強化する狙いがあるとのことです。

■3. ゲーム業界のM&Aの動向

22年は、上記2件のほかにも大型案件の発表が相次いでおり、ゲーム業界のM&Aは盛り上がりを見せています。ソニーとレゴの出資を受けたエピックの株式価値は単純に295億米ドルに上るということになりますが、他にも例えば、マイクロソフト社による同社として過去最大の687億米ドルを投じて行う大手ゲームソフト開発会社の買収や、米国の大手ゲームソフト開発会社のテイクツー・インタラクティブによるモバイルゲーム会社の買収が発表されるなど、今年もゲーム業界は引き続き活発な動きを見せると言えそうです。スマートフォンの普及に伴いゲーム人口は急速にその数を伸ばしており、21年には30億人に達しているといわれています。新型コロナウイルスの流行も追い風となり、ゲームはわれわれにとって欠かせない娯楽となりました。一方で業界としてはまだ新しく、成長の余地があると言えるゲーム業界は、今後も積極的なM&Aが期待されます。

https://www.nna.jp/news/2483800

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