今回も前回に引き続きデューデリジェンスについて検討します。
■4. デューデリジェンスの実施時期
デューデリジェンスは、買い手からの意向表明書(Letter of Intent)の提出後、買い手と売り手との間での基本合意書(Memorandum of Understanding)またはタームシートの締結後に実施されることが一般的です。意向表明書提出前に実施される事前予備調査もデューデリジェンスに含むことがありますが、意向表明書提出後に実施される詳細調査である狭義のデューデリジェンスを一般的にはデューデリジェンスと言います。
■5. デューデリジェンスの実施方法
意向表明書または基本合意書の中で、デューデリジェンスの実施時期や実施方法について記載します。実施期間は1~2カ月程度、長い場合には3カ月超にまたがることもありますが、デューデリジェンス実施期間は売り手において重要な意思決定に一定の制約がなされることが通常であること、実施期間が長期化するとその間に事業内容や事業を取り巻く環境に生じる変化も大きくなること、デューデリジェンスは当事者双方にとって負担の大きい手続きであることなどの理由から、なるべく短期間で行うことが望ましいです。
実施に係る大まかな流れは以下のとおりです。
(1)買い手側のアドバイザーから資料開示要求リストを売り手に対して提出
(2)双方アドバイザー、買い手の専門家によるキックオフミーティングの実施
(3)データルームの作成とデータルームへの開示資料の提供
(4)開示資料の閲覧、調査
(5)質問事項リストの提出、資料開示要求リストの更新
(6)マネジメントや実務担当者に対するインタビューや現地調査の実施
(7)双方のアドバイザーおよび専門家による定例会議
(8)買い手側内部での中間報告会の実施
(9)買い手側内部での最終報告会の実施
データルームは、クラウドサーバー上にデータを保存して行うバーチャルデータルームの利用が近時は多くなっています。バーチャルであれば遠隔からレビューできますし、複数人が同時に同じ書面をレビューすることもでき、非常に便利です。その一方、紙でしかない文書を1つずつデータ化して保存するのは非常に手間がかかる作業であり、売り手の負担が大きいことや紙のファイルをレビューした方が効率的であることもあることなどから、リアルとバーチャルを組み合わせたハイブリッド型が活用されています。
一定期間内に終了しなかった場合や、終了後に新たな論点が判明した場合には、追加デューデリジェンスと追加報告会の実施を行う場合もあります。筆者も、日本での弁護士時代、買い手側として年末に行ったデューデリジェンスで、筆者が担当した領域でディールブレーカーとなる大きな問題点が発覚し、その点の確認のための追加デューデリジェンスを行うことになり、正月返上でひたすら契約書の精査と取引先別の契約内容一覧表の作成に従事した思い出があります。