会社・事業の買収・売却に関する記事(第94回)がNNAに掲載されました

前回まで3回にわたって資産譲渡、事業譲渡、そして株式譲渡の違いについてご紹介しました。今回は、今月発表された日本企業による2件のマレーシアの合併・買収(M&A)案件をご紹介します。 

1. 三井物産とエフピコによる食品容器メーカーに対する出資案件 

三井物産は5月9日、食品容器製造大手のエフピコ(広島県福山市)と共に、東南アジアを中心に機能性食品容器の製造・販売を手掛けるLee Soon Seng Plastic Industries(リースーンセンプラスチックインダストリイズ=LSSPI=)の全株式を取得することを発表しました。三井物産の同日付プレスリリースによれば、クロージングは、LSSPIの株主(上場企業であるSCGM)における臨時株主総会の特別決議による承認をはじめとする必要な許認可の取得後、2023年3月期の第2四半期ごろを予定しており、総取得価額は約160億円で、三井物産の出資比率は60%、エフピコは40%であるとのことです。 

LSSPIは、マレーシアにおける機能性食品容器製造会社の最大手で、シンガポール、オーストラリア、フィリピンなどに販売網を有しています。LSSPIの100%親会社であるSCGMの主たる事業はLSSPIであり、SCGMの21年4月期の売上高は2億4,600万リンギ(約71億3,200万円)、EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は5,500万リンギでした。 

三井物産のプレスリリースによれば、東南アジアでは人口増加に加えて、スーパーマーケットやコンビニエンスストアの普及に伴う小売り形態の近代化や、フードデリバリー市場の成長によって、機能性食品容器の需要が拡大していることから、エフピコが持つ生産効率向上ノウハウや各種製品開発技術を導入することにより、安全・安心と市場ニーズに対応する形で環境にも配慮した製品開発を行い、LSSPIのさらなる成長を目指すとのことです。  

2. ジャパンエレベーターサービスによるファシリティーマネジメント会社に対する出資 

ジャパンエレベーターサービスホールディングスは、独立系のエレベーターメンテナンスサービス業としては業界最大手、東証プライムに上場する時価総額約1,400億円の会社で、同社は5月12日、マレーシアにてファシリティーマネジメント事業などを展開するコフレス(COFRETH)の株式80%を取得することを発表しました。クロージングは22年6月下旬を予定しているとのことです。 

コフレスの設立は1986年。マレーシアの商業施設、オフィスのファシリティーマネジメント事業などを営み、首都クアラルンプール、ジョホールバルを中心に実績を持っています。 

ジャパンエレベーターサービスは、インドネシア、インド、香港に現地法人を有するほか、21年11月にはベトナムの独立系の同業を買収しており、海外においても積極的な事業展開を行っています。マレーシアでは多くの日系メーカー製のエレベーターを目にしますが、コフレスは機械設備のメンテナンスのほかにエネルギー関連事業や建物緑化関連事業なども手掛けており、同社の子会社化はジャパンエレベーターサービスの業務の多様化にも資することになりそうです。 

<プロフィル>

神林義之(かんばやし・よしゆき)、ラジフ・ラムザン(Razif Ramzan)

www.nna.jp/news/show/2339776

他の記事を見る

会社概要

当事務所は、日本・マレーシア間のクロスボーダーM&Aをトータルでサポートいたします。

ニュースレターに登録する

By submitting your mail here,  you agree to our Privacy Policy and Terms of Use.