会社・事業の買収・売却に関する記事(第92回)がNNAに掲載されました

資産譲渡、事業譲渡、株式譲渡その2

前回は、「会社を売却」するオプションのうち、資産譲渡、事業譲渡、そして株式譲渡という3つの手段の概要をご説明しました。簡単にまとめると、前二者は売り手が対象会社それ自体となる一方、株式譲渡の場合の売り手は対象会社ではなく株主であること、そして、前二者は譲渡の対象となる資産・事業を特定する必要がある一方、株式譲渡の場合には株式の譲渡=オーナーシップの移転であるだけで、対象会社の資産・事業に変動がないことが大きな相違点でした。このことを図で表してみます。

これらのいずれの選択肢を選ぶかは、まずは売り手において決定した上で買い手に提案することになりますが、売り手のみにスキームの決定権があるのではなく、買い手との共同作業によって作り上げていきます。  

例えば、買い手と交渉する中でそれまで売り手が重視していなかった問題点が明らかとなり、スキームが変更されることもしばしばありますし、事業譲渡の場合、取引先を承継する範囲、移籍させるスタッフの範囲、移転する売掛金や負債を特定していきます。

株式譲渡の場合でも、100%譲渡と一部譲渡では大きく異なりますので、何パーセントを譲渡するか交渉の中で詰めていくことになります。例えば、100%譲渡するか、株主総会特別決議で拒否権を保持すべく75%未満の譲渡にとどめるか(日本で特別決議で否決するには34%が必要ですが、マレーシアでは26%となります)、日本の親会社と連結対象とするか、持ち分法適用会社とするか(20%以上50%以下)などが大きな考慮要素となります。

さらに、株式の一部譲渡の場合、譲渡後も継続的に株主として売り手と買い手は関係性を継続していく必要があるため、株式譲渡後に売り手が留保する権利を株主間契約中で詳細に規定することになります。

また、一定期間経過後に買い手に対して残りの株式に関する買い取りの権利を認める場合をコールオプションと言い、逆に売り手に対して買い手に対する売却の権利を付与することをプットオプションと言いますが、これらの有無についても一部譲渡時に取り決めます。100%譲渡の場合でも、一定期間は売り手が顧問のような形で会社の経営をサポートすることで買い手のスムーズな継承を助けるのが一般的ですが、その場合の条件についても株式譲渡と同じタイミングで同意しておく必要があります。

このように、資産譲渡、事業譲渡、株式譲渡それぞれの長短を理解した上で、さまざまなオプションを決定していくのが合併・買収(M&A)の交渉プロセスとなります。

https://www.nna.jp/news/show/2327769

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