会社・事業の買収・売却に関する記事(第90回)がNNAに掲載されました

前回は、2022年に発表された日本企業による2件の合併・買収(M&A)案件(JCBによるフィンテック=ITを活用した金融サービス=企業に対する出資案件と吉野家によるエグジット=出資引き揚げ=案件)についてご紹介しました。今回は、前回に引き続き、日本企業による2件のM&A案件をご紹介します。

1. 伊藤忠による価格比較サイト運営企業に対する出資案件 

伊藤忠商事は、22年3月23日にマレーシアを本拠に価格比較サイトを運営するアイプライスへの出資を発表しました。また、同日にグローバル・ブレイン(東京都渋谷区)も同社がゼネラルパートナー(無限責任組合員)として参画するKDDIオープンイノベーションファンド3号を通じてアイプライスに出資したことを発表しています。 

アイプライスは、伊藤忠のプレスリリースによれば、14年に首都クアラルンプールで設立され、オンライン価格比較サイト・クーポンサイト、モバイルアプリの開発・運営を事業内容とし、インドネシア、マレーシア、シンガポールなど7カ国・地域において、東南アジア最大の価格比較サイトを運営しています。同社の比較サイトは、800万を超える出店者による70億以上の商品情報にアクセスできることに加え、機械学習を用いた独自のアルゴリズム(計算手法)で瞬時に商品が自動で最適表示されるため、東南アジアでのリーディングカンパニーとしての地位を確立しており、東南アジア各国の金融会社などとの提携により、比較サイト内の決済機能を強化しているとのことです。

日本でもさまざまな価格比較サイトがありますが、マレーシアをはじめとする東南アジア諸国は国が若いこともあってか、日本以上にスマートフォンの普及率も高く、電子商取引(EC)も日常的に用いられています。その一方で、東南アジアではクレジットカード決済の比率が低く、後払い決済の利用額が年率25%のペースで急拡大しているそうです。このような中、伊藤忠は、インドネシアで携帯電話購入者向け後払い決済サービスを提供する100%子会社ITCオート・マルチ・ファイナンス(IAMF)とアイプライスとの間で、決済機能に関するパートナーシップ契約を締結したことも発表しています。 

2. セルソースによる妊活支援会社への一部出資 

セルソース(東京都渋谷区)は、再生医療のプラットフォームとして、法規対応支援、医療機関・研究機関と連携した新治療の開発、加工受託を提供するバイオベンチャーで、東証マザーズに上場しており、3月25日現在、時価総額が約493億円に達しています。 

セルソースは3月24日に、マレーシアで妊活支援事業を行っているLumirous(ルミラス)社に出資したことを発表しました。セルソースのプレスリリースによると、ルミラスは20年にクアラルンプールにおいて日本人によって設立され、マレーシアにおいて、妊娠を望むカップルに対し、妊活支援事業や不妊治療クリニックへの送客事業を展開しています。そして、ルミラスはマレーシアの主要な不妊治療クリニックと提携しており、今般調達した資金を用いて、マーケティング強化並びに提携クリニックのネットワーク拡大に取り組む予定であるとのことです。 

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