会社・事業の買収・売却に関する記事(第72回)がNNAに掲載されました

The Daily NNA Malaysia版(2021年7月21日)に、弊社代表の寄稿した「会社・事業の買収・売却 第72回 出資と融資その3」が掲載されました。前回に引き続き、出資と融資の違いについてお話しします。

www.nna.jp/news/show/2215562

過去2回にわたって、出資と融資の違いについてお話ししました。出資(Equity finance)は株主としての地位を取得し、議決権や配当受領権などを得て会社の持ち分を取得することになる一方、融資(Debt finance)の場合は債権者として元本の償還を受ける権利および利息請求権を有するという大きな違いがあります。

融資をさらに進めたものとして社債(Bond)があります。社債とは、会社が行う割り当てにより発生する当該会社を債務者とする金銭債権であって、会社法676条各号に掲げる事項(募集事項)についての定めに従い償還されるもの、というのが日本の会社法上の定義です。平たく言うと、社債は不特定多数から融資を受けられる仕組み、と言うことができます。

このように同じ資金調達目的ではあっても出資と融資は全く異なる性格のものですが、以下のように株式と社債の両方の性格を併せ持つ、いわば中間的な制度もいろいろと開発されています。

1.種類株式(Class share)

種類株式とは、権利の内容の異なる2種類以上の株式を発行した場合の各株式のことを言い、普通株式の対概念です。例えば、高配当を受領することのみを期待し、会社の経営には興味はないという投資家もいますし、逆に会社の経営に大いに興味を持っているという投資家もいます。また、一定期間経過後に会社に株式を償還してもらうことを希望する株主もいます。このように、投資家のニーズはさまざまですので、これらのニーズに応えるように設計されるものが種類株式というわけです。

例えば、高配当を期待し経営には興味を有しない投資家に対しては、議決権制限付き配当優先株という種類株式があります。これは文字通り、議決権は有しない一方で、配当は他の普通株主よりも優先的に扱われるというものです。

会社の経営に興味を持つ投資家に対しては、一定の事項についての拒否権条項付き株式(黄金株と言うこともあります)や、役員選任権などの会社の重要事項について特別の定めのある株式があります。

また、合併・買収(M&A)において元のオーナーが一定期間は一定割合で株式を保有し続け、あらかじめ合意された条件を成就した場合に会社が自らの利益で当該株式を消却する(その結果、元のオーナーが対価を得て投下資本を回収=エグジット=することができる)ような償還条項付きの株式もあります。

このように、同じ株式でも、種類株式は利息のように一定の配当が確保されたり、一定期間経過後に償還されたりする点で融資に近い性質を有するように設計できます。

2.さまざまな融資・社債

社債権者や金融債権者もさまざまなニーズを有します。例えば、一定期間の間は社債権者として一定の割合で利息を受け取りつつ、途中から株式に転換して高配当を受領したいというニーズがあります。

また、融資を受ける側にも多様な資金調達ニーズがあります。例えば、融資は他人資本であり、融資金額が増えるほど自己資本比率が低下するので新規で借り入れを受けることが難しくなるのですが、資本性の劣後ローンであれば、債権者である金融機関側では金融検査上、自己資本と見なすことができて、新規に貸し付けをしやすいという性質があります。元本は満期に一括で弁済することが予定され、債務者側ではあくまでも借り入れとして会計上処理します。資本性の劣後ローンは、本来は融資なのだけれども金融機関において資本として扱ってもらうことができるという意味で、エクイティファイナンスとデットファイナンスの中間的な位置付けの商品であるということができます。

<プロフィル>神林義之(かんばやし・よしゆき)

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