会社・事業の買収・売却に関する記事(第71回)がNNAに掲載されました

The Daily NNA Malaysia版(2021年7月9日)に、弊社代表の寄稿した「会社・事業の買収・売却 第71回 出資と融資その2」が掲載されました。前回に引き続き、出資と融資の違いについてお話しします。

www.nna.jp/news/show/2210869

前回に引き続き、出資と融資の違いについてお話しします。

1.前回の確認

出資は対象会社の経営に参画する権利を取得することをいう一方、お金を貸すのが融資であり、具体的な違いとして、1:議決権の有無、2:配当と利息、3:出資金や元本の弁済義務の有無、4:会社清算時の序列、について検討しました。

2.他の違い

(5)会計上の扱いの違い

対象会社において出資金は資本の部に計上される一方、融資の場合は借入金として負債の部に計上されます。出資金が増えると自己資本比率が上がり、融資金が増えるとその分、自己資本比率が下がります。

(6)税務上の扱いの違い

マレーシアではキャピタルゲイン課税はなされません。株式を譲渡して譲渡益が出た場合や配当を受領した場合に、譲渡益部分や配当金に所得税が課せられることはないということです。そのため、マレーシアにおいて出資者が配当を受領しても税金はかかりません。

一方、融資時に利息を受け取った場合、課税対象となります。

(7)対象会社における社内手続きの違い

株式を取得するものには、対象会社の既存株主から株式の譲渡を受ける場合と、対象会社が増資(資本の増加)を行い増資分を引き受ける場合とがあります。前者の場合、対象会社が非公開会社であれば対象会社による譲渡承認決議を受ける必要があり、後者の場合も誰に株主になってもらうかは会社の経営に重大な影響を及ぼす事項ですので、取締役決議や株主総会での決議が必要となります。特に、増資の場合は新しく株主が増える分、既存の他の株主の持ち株比率が必然的に低下し(希釈化)、会社の支配権に及ぼす影響力が低下することになりますので、既存の株主保護のための手続きが取られています。

一方、融資の場合には既存株主の支配権に影響を与えることはありませんので、代表者が決定することができるか、金額によって取締役決議により決定することができます。このように、出資と融資には、対象会社における株主総会の決議が必要かどうかという違いもあります。

(8)貸金業法の影響

融資の場合、融資者において業として融資を行うと貸金業法に抵触する可能性があることに留意が必要です。一方、出資の場合には出資者に対するそのような規制はありません。

(9)外資規制の影響

物流業界や教育業界などのように外資の出資比率が規制されている業界があります。そのとき、外資が出資すると出資比率が変化することになり、外資規制に抵触する可能性が出てくるケースがあります。一方、融資の場合には会社の支配権には何ら影響を及ぼしませんのでそのような考慮は不要です。

(10)担保を伴うかどうか

融資の場合、元本を確実に回収するため、対象会社の不動産や価値ある動産に抵当権や質権、譲渡担保権などの担保権を設定したり、代表者の連帯保証を取得したりすることが一般です。一方、出資の場合には出資金返還の形で出資金を回収することはそもそも予定されていませんので、担保を設定することはありません。

<プロフィル>

神林義之(かんばやし・よしゆき)

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