マレーシアのM&A案件 2021年 Part 5 (記事・英文)

こんにちは、Likearisingsun の神林です。今回は、2021 年 3 月 26 日にマレーシアにて実施された STG に よるマレーシアのアルミダイカストメーカーの株式取得案件についてご紹介します。なお、ダイカスト(ダイキャスト)とは、金型鋳造法の一つで、金型に溶けた金属(溶湯)を圧入することで高い寸法精度の鋳物を短時間で大量に生産する鋳造方式のことをいいます。

1 マグネシウムおよびアルミダイカスト製品製造を行う STG

STG は、1975 年に大阪で設立されました。製品軽量化を得意とする、マグネシウムダイカストを中心とした、金型の設計、金属部品の鋳造、機械加工、仕上げ、化成処理までをワンストップで行う事業を展開しています。日本国内では大阪と静岡に工場を有し、海外では香港、深圳、タイに拠点を持っています。2019 年 6 月には TOKYO PRO Market への上場を果たし、2020 年 3 月期の売上高は約 25億円、純利益は約 1 億 6000 万円を記録しています。大阪工場は30 人、静岡工場が 40 人、中国工場が 50 人、タイ工場が 220 人、そして今回傘下に加えたマレーシア工場が 470 人という陣容です。

2 アルミダイカストメーカーである STX プレシジョン

(1) 対象会社概要

STG の 2021 年 3 月 26 日付プレスリリースによれば、STX プレシジョンはマレーシア・ジョホールバルに拠点を置き、大手グローバルメーカー各社を主要顧客とし、電気機器部品、自動車部品等の様々な製品に対応が可能であるアルミダイカストメーカーです。創業は2006 年、ジョホールバルに 3 つの工場を有し、資本金は約3 億 4000 万円、2019 年度における純資産は約 7 億円、売上高は約 18 億円、約 1 億 1000 万円の純損失を計上しています。 今般、STG は、STX プレシジョンの発行済株式の全てを 6 億 5400 万円で取得しました。STX プレシジョンに対してマレーシアの地場のプライベートエクイティファンド(PE ファンド)が 2013 年に出資をしていたところ、同 出資から既に7 年が経過していたため、同ファンドによる Exit(持分売却)が予想されていたところでした。

(2) 出資の狙い

STG のプレスリリースによれば、STG は「将来に向けて新規事業や M&A を積極的に展開し、特に海外における生産能力向上・サプライチェーンの多元化を目指すことを経営課題として」きたとあります。そして、STX プレシジョンとは、「生産における互いの強みを融合することで、生産技術の向上を図ることができる」こと、さらに、「主要顧客の重複もほとんどなく、STG のマグネシウムダイカスト技術の移転等によるサプライチェーンの多元化などのシナジー効果を見込んでいる」とのことです。2019 年の TOKYO PRO Market への上場に引き続く今回の STX プレシジョンの買収で STG のさらなる事業展開が期待されます。なお、本件の関係者によれば、コロナ渦のため買収監査等においては日本から出張者が来ることなく現地で対応したとのことで、現地への渡航が難しい中でも関係者が工夫を凝らしてクロスボーダーM&A を実行していることがわかります。

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