会社・事業の買収・売却に関する記事(第109回)がNNAに掲載されました

今回は、意向表明書について見ていきます。  

合併・買収(M&A)において、意向表明書とは、買い手・投資家が売り手・対象会社に対して、買収や出資の意向を書面で表明するものを言います。英語では、"Letter of Intent"と言い、頭文字を取って「LOI」と呼ぶことが多いです。 

1. 意向表明書の提出プロセス 

この意向表明書は、おおむね下記のようなプロセスを経て提出されます。 

  1. 売り手のファイナンシャル・アドバイザー(FA)から出資者側に対し、ティーザーと呼ばれる概要資料を交付 
  1. 出資者側がさらに検討を進める場合には双方の間で守秘義務契約(Non-Disclosure Agreement=NDA)を締結 
  1. 売り手から出資者側にインフォメーションメモランダム(IM)、インフォメーションパッケージ(IP)と呼ばれる詳細資料を交付 
  1. 追加資料の依頼や質疑応答(Q&A)、現地視察などを実施 
  1. 出資者側が売り手に対して意向表明書を提出 

2. 意向表明書の記載内容 

M&Aでは、一般的に下記のような内容が意向表明書に記載されます。 

  1. 当事者、出資・買収の対象とする対象会社の特定 
  1. 出資・買収の意向 
  1. 出資・買収の目的、今後の計画 
  1. 出資・買収の金額、計算方法、対象会社の負債の承継の有無 
  1. 出資・買収のスキーム(株式譲渡か事業譲渡か、全部出資か一部出資かなど) 
  1. 出資・買収のタイムライン(デューデリジェンス実施時期、最終契約締結時期、クロージング時期など) 
  1. デューデリジェンスの実施の有無・要領 
  1. 対象会社の従業員の扱い 
  1. 対象会社のマネジメントの継続関与(リテンションと言います)への希望 
  1. 出資・買収資金の資金源 
  1. 独占交渉権の意向 
  1. 法的拘束力の有無 
  1. 意向表明書の有効期限 
  1. 特記事項(連帯保証、手付金など) 
  1. その他(守秘義務、準拠法、管轄など) 

3. 当事者・対象会社の特定について

スキームにより異なりますが、M&Aでは、売り手・買い手・対象会社の3者が登場します。株式譲渡の場合には、売り手と買い手が当事者となり、対象会社の株式が売買対象物となります。複数の法人が売却ターゲットとなることもあるため、どの法人を出資・買収の対象とするか対象会社を特定する必要があります。 

また、売り手による出資者の与信判断のため、どの法人が受け皿・資金の出し手となるかについても明記する必要があります。特にクロスボーダーM&Aの場合には、相手側が上場会社であれば財務情報が公開されているのでまだいいのですが、相手方の会社の信用情報を取得する手段が限られていることが一般的です。

非公開会社が出資者・買収者となる場合には、なるべく信用力のある会社を相手方当事者とすることが望ましいですし、新規に新設する会社が買収当事者となるような場合には、親会社など資金力のある会社・個人に連帯保証させるなどの手当てが必要となります。そのために、誰が出資・買収当事者となるかを意向表明書によって特定してもらうことが重要となるのです。 

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