今回も前回に引き続き、2022年に発表された日本企業による2件の合併・買収(M&A)案件をご紹介します。
■1. 博報堂によるデジタルエージェンシーに対する出資案件
博報堂は8月2日、マレーシアの独立系デジタルエージェンシーであるキングダムデジタルソリューションズの持分株式のうち80%を取得し、連結子会社としたことを発表しました。
博報堂は1895年設立、売上高約9,000億円、時価総額約5,000億円で、近年デジタル分野で売り上げを伸ばす日本を代表する広告代理店です。また、同社は初めての海外拠点として1973年にマレーシアに会社を設立し、その後2003年、14年にそれぞれ新たな会社を設立し、マレーシアでの活動の幅を広げてきました。
キングダムデジタルソリューションズは07年に設立され、マレーシアを中心に東南アジア諸国連合(ASEAN)のクライアントに対し、ソーシャルメディアやコンテンツマーケティング、デジタルキャンペーンなど幅広いサービスを提供し、アジア最大の広告専門誌などで数多くの賞を受賞しているデジタルエージェンシーです。従業員数は100人強、日系企業では化粧品大手のコーセー、ほかには配車アプリ大手のグラブ、ホンリョン銀行、フェデックスなどをはじめとする60以上のブランドを顧客に有しています。
キングダムデジタルソリューションズの22年8月2日付プレスリリースによると、同社と同じビジョンと価値観を持つ博報堂に買収されることで、既存のインフラ、創造性、洞察力を活用し、サービスの幅が広がり深化することを企図しているとのことで、博報堂のマレーシアでのさらなる事業展開が期待されます(※1)。
■2. 大成ラミックによるストレッチフィルム製造・販売会社への子会社株式譲渡
大成ラミック(埼玉県白岡市)は9月2日、同社子会社タイセイ・ラミック・マレーシアの株式のうち80.2%をマレーシアでストレッチフィルムを製造・販売するサイエンテックス・パッケージング・フィルムに譲渡したことを発表しました。
大成ラミックは1966年の設立、日本国内トップシェアを誇る高品質な液体包装フィルムや、高速液体包装重鎮機の開発から製造、販売まで行っているリーディングカンパニーです。マレーシアでは子会社タイセイ・ラミック・マレーシアの工場をスランゴール州に構え、食品・飲料・日用雑貨向けの印刷・ラミネート加工された軽包装材を製造・販売していました。このたびの株式譲渡を経て、製造工程はサイエンテックス・パッケージング・フィルムにて行い、販売については新たに大成ラミックがマレーシアに設立した100%子会社であるタイセイ・ラミック・マレーシアにて行うとのことです。
譲渡先のサイエンテックス・パッケージング・フィルムは、1993年に設立されたサイエンテックス・グループの中核会社の一つで、ストレッチフィルムの製造と不動産投資を行っています。サイエンテックスはフィルムの製造と「アフォーダブルハウス」と呼ばれる比較的低価格の住宅の開発とを2つの事業の柱にしているグループで、フィルムの製造ではマレーシア最大手、時価総額は約1,600億円に上ります。
サイエンテックスの2022年9月2日付プレスリリースによると、今回の株式譲渡が急成長中のフィルム事業の推進力となり、コスト競争力のある商品提供と飲食(F&B)分野や、医療・ヘルスケア分野にてマーケットシェアの拡大を目指すとしています(※2)。
https://www.nna.jp/news/2424407
[2] https://www.scientex.com.my/wp-content/uploads/2022/09/20220902-PressRelease-EN.pdf